MP3: Difference between revisions

From daw.wiki
Jump to navigation Jump to search
DawWriter (talk | contribs)
MP3のMPEG Layer III符号化、frame、ID3、bitrate、VBRを詳説
 
Marked this version for translation
 
Line 2: Line 2:


<translate>
<translate>
<!--T:1-->
'''MP3'''は、MPEG Audio Layer IIIを用いる非可逆圧縮音声方式、およびその音声ビットストリームを格納したファイルの一般的呼称である。ファイル拡張子は通常<code>.mp3</code>である。
'''MP3'''は、MPEG Audio Layer IIIを用いる非可逆圧縮音声方式、およびその音声ビットストリームを格納したファイルの一般的呼称である。ファイル拡張子は通常<code>.mp3</code>である。


<!--T:2-->
MP3は1990年代後半以降、インターネット上の音楽配布、携帯音楽プレーヤー、CDリッピングなどで広く普及した。
MP3は1990年代後半以降、インターネット上の音楽配布、携帯音楽プレーヤー、CDリッピングなどで広く普及した。


<!--T:3-->
== 名称 ==
== 名称 ==
MP3の「MP3」はMPEG Audio Layer IIIに由来する。
MP3の「MP3」はMPEG Audio Layer IIIに由来する。


<!--T:4-->
Layer IIIはMPEG-1 AudioおよびMPEG-2 Audioの規格群で定義される。Library of CongressはMP3 encodingをISO/IEC 11172-3およびISO/IEC 13818-3に属するMPEG Layer IIIとして整理している。<ref name="loc-mp3-main">[https://www.loc.gov/preservation/digital/formats/fdd/fdd000012.shtml Library of Congress, ''MP3 (MPEG Layer III Audio Encoding)'']</ref>
Layer IIIはMPEG-1 AudioおよびMPEG-2 Audioの規格群で定義される。Library of CongressはMP3 encodingをISO/IEC 11172-3およびISO/IEC 13818-3に属するMPEG Layer IIIとして整理している。<ref name="loc-mp3-main">[https://www.loc.gov/preservation/digital/formats/fdd/fdd000012.shtml Library of Congress, ''MP3 (MPEG Layer III Audio Encoding)'']</ref>


<!--T:5-->
== 非可逆圧縮 ==
== 非可逆圧縮 ==
MP3は[[<tvar name=1>Special:MyLanguage/非可逆圧縮音声ファイル</tvar>|非可逆圧縮]]方式である。
MP3は[[<tvar name=1>Special:MyLanguage/非可逆圧縮音声ファイル</tvar>|非可逆圧縮]]方式である。


<!--T:6-->
[[<tvar name=2>Special:MyLanguage/Psychoacoustics</tvar>|心理音響]]モデルを利用し、人間の聴覚で知覚されにくい成分へ割り当てる情報量を減らす。
[[<tvar name=2>Special:MyLanguage/Psychoacoustics</tvar>|心理音響]]モデルを利用し、人間の聴覚で知覚されにくい成分へ割り当てる情報量を減らす。


<!--T:7-->
このため、decode後のPCMはencode前のPCMと完全には一致しない。
このため、decode後のPCMはencode前のPCMと完全には一致しない。


<!--T:8-->
== 基本的な符号化 ==
== 基本的な符号化 ==
MP3では時間信号を周波数領域へ変換し、聴覚モデルに基づいて量子化精度を割り当てる。
MP3では時間信号を周波数領域へ変換し、聴覚モデルに基づいて量子化精度を割り当てる。


<!--T:9-->
処理には、
処理には、


<!--T:10-->
* filter bank
* filter bank
* MDCT
* MDCT
Line 30: Line 40:
* stereo coding
* stereo coding


<!--T:11-->
などが関係する。
などが関係する。


<!--T:12-->
具体的なencoder実装は製品ごとに異なり、同じbitrateでも品質差が生じ得る。
具体的なencoder実装は製品ごとに異なり、同じbitrateでも品質差が生じ得る。


<!--T:13-->
== フレーム ==
== フレーム ==
MP3 bitstreamは連続したaudio frameとして構成される。
MP3 bitstreamは連続したaudio frameとして構成される。


<!--T:14-->
各frameにはsync、version、layer、bitrate、sample rate、channel mode等を示すheaderが含まれる。
各frameにはsync、version、layer、bitrate、sample rate、channel mode等を示すheaderが含まれる。


<!--T:15-->
MP3ファイルはこれらのbitstreamに加え、先頭または末尾へmetadataを持つ場合がある。
MP3ファイルはこれらのbitstreamに加え、先頭または末尾へmetadataを持つ場合がある。


<!--T:16-->
== ID3 ==
== ID3 ==
MP3では[[<tvar name=3>Special:MyLanguage/ID3</tvar>|ID3]] metadataが広く用いられる。
MP3では[[<tvar name=3>Special:MyLanguage/ID3</tvar>|ID3]] metadataが広く用いられる。


<!--T:17-->
保存できる情報には、
保存できる情報には、


<!--T:18-->
* title
* title
* artist
* artist
Line 54: Line 72:
* comment
* comment


<!--T:19-->
などがある。
などがある。


<!--T:20-->
Library of CongressはMP3 file formatを、MP3 bitstreamへID3 metadata blockを前置または後置できるde facto file formatとして説明している。<ref name="loc-mp3-file">[https://www.loc.gov/preservation/digital/formats/fdd/fdd000105.shtml Library of Congress, ''MP3 File Format'']</ref>
Library of CongressはMP3 file formatを、MP3 bitstreamへID3 metadata blockを前置または後置できるde facto file formatとして説明している。<ref name="loc-mp3-file">[https://www.loc.gov/preservation/digital/formats/fdd/fdd000105.shtml Library of Congress, ''MP3 File Format'']</ref>


<!--T:21-->
== ビットレート ==
== ビットレート ==
MP3では[[<tvar name=4>Special:MyLanguage/Bitrate</tvar>|ビットレート]]がファイルサイズと品質を左右する。
MP3では[[<tvar name=4>Special:MyLanguage/Bitrate</tvar>|ビットレート]]がファイルサイズと品質を左右する。


<!--T:22-->
代表的には128 kbps、192 kbps、256 kbps、320 kbpsなどが使われてきた。
代表的には128 kbps、192 kbps、256 kbps、320 kbpsなどが使われてきた。


<!--T:23-->
一般に高bitrateほど符号化に利用できる情報量が増えるが、最終品質はencoder、content、stereo mode、sample rateにも依存する。
一般に高bitrateほど符号化に利用できる情報量が増えるが、最終品質はencoder、content、stereo mode、sample rateにも依存する。


<!--T:24-->
== CBR ==
== CBR ==
CBR(Constant Bit Rate)では、各区間にほぼ一定のbitrateを割り当てる。
CBR(Constant Bit Rate)では、各区間にほぼ一定のbitrateを割り当てる。


<!--T:25-->
ファイルサイズや転送速度を予測しやすい利点がある。
ファイルサイズや転送速度を予測しやすい利点がある。


<!--T:26-->
== VBR ==
== VBR ==
VBR(Variable Bit Rate)では、音声内容に応じてbitrateを変化させる。
VBR(Variable Bit Rate)では、音声内容に応じてbitrateを変化させる。


<!--T:27-->
複雑な部分には多く、単純な部分には少ないデータを割り当てることで、同程度の平均bitrateで効率を高めることができる。
複雑な部分には多く、単純な部分には少ないデータを割り当てることで、同程度の平均bitrateで効率を高めることができる。


<!--T:28-->
== Joint stereo ==
== Joint stereo ==
MP3ではstereo信号の冗長性を利用するJoint Stereoが使われる場合がある。
MP3ではstereo信号の冗長性を利用するJoint Stereoが使われる場合がある。


<!--T:29-->
左右を単純に独立encodeする代わりに、Mid/Side的な表現などを利用してbit allocationを効率化する。
左右を単純に独立encodeする代わりに、Mid/Side的な表現などを利用してbit allocationを効率化する。


<!--T:30-->
Joint Stereoは「モノラル化」を意味するものではない。
Joint Stereoは「モノラル化」を意味するものではない。


<!--T:31-->
== 音質とartifact ==
== 音質とartifact ==
bitrateやencoder設定が不十分な場合、
bitrateやencoder設定が不十分な場合、


<!--T:32-->
* pre-echo
* pre-echo
* transient smearing
* transient smearing
Line 91: Line 123:
* stereo image degradation
* stereo image degradation


<!--T:33-->
などが知覚されることがある。
などが知覚されることがある。


<!--T:34-->
特に鋭いtransientや高域密度の高い素材は圧縮artifactが現れやすい場合がある。
特に鋭いtransientや高域密度の高い素材は圧縮artifactが現れやすい場合がある。


<!--T:35-->
== 再エンコード ==
== 再エンコード ==
MP3をWAVへdecodeしても、MP3 encoding時に失われた情報は戻らない。
MP3をWAVへdecodeしても、MP3 encoding時に失われた情報は戻らない。


<!--T:36-->
さらにそのWAVを再びMP3へencodeすると、新しいlossy encodingが加わる。
さらにそのWAVを再びMP3へencodeすると、新しいlossy encodingが加わる。


<!--T:37-->
制作工程では、MP3をmasterとして反復編集するより、WAV、AIFF、FLACなど非圧縮または可逆形式の元データを保持する方が適している。
制作工程では、MP3をmasterとして反復編集するより、WAV、AIFF、FLACなど非圧縮または可逆形式の元データを保持する方が適している。


<!--T:38-->
== MP3とAAC ==
== MP3とAAC ==
[[<tvar name=5>Special:MyLanguage/AAC</tvar>|AAC]]はMP3より後に設計されたMPEG系audio coding方式である。
[[<tvar name=5>Special:MyLanguage/AAC</tvar>|AAC]]はMP3より後に設計されたMPEG系audio coding方式である。


<!--T:39-->
両者はともに非可逆知覚符号化だが、transform、tool、profile、bitstream構造が異なる。
両者はともに非可逆知覚符号化だが、transform、tool、profile、bitstream構造が異なる。


<!--T:40-->
ファイル拡張子やcontainerも異なるため、MP3とAACは互換codecではない。
ファイル拡張子やcontainerも異なるため、MP3とAACは互換codecではない。


<!--T:41-->
== DAWでの利用 ==
== DAWでの利用 ==
DAWではMP3を、
DAWではMP3を、


<!--T:42-->
* reference track
* reference track
* preview
* preview
Line 119: Line 161:
* delivery copy
* delivery copy


<!--T:43-->
として使うことがある。
として使うことがある。


<!--T:44-->
録音やmix内部のworking formatには、通常WAVやAIFF等のPCMが適する。
録音やmix内部のworking formatには、通常WAVやAIFF等のPCMが適する。


<!--T:45-->
== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[<tvar name=6>Special:MyLanguage/音声ファイル</tvar>|音声ファイル]]
* [[<tvar name=6>Special:MyLanguage/音声ファイル</tvar>|音声ファイル]]
Line 132: Line 177:
* [[<tvar name=12>Special:MyLanguage/Psychoacoustics</tvar>|心理音響]]
* [[<tvar name=12>Special:MyLanguage/Psychoacoustics</tvar>|心理音響]]


<!--T:46-->
== 参考資料 ==
== 参考資料 ==
<references />
<references />
</translate>
</translate>

Latest revision as of 06:40, 9 October 2026

MP3は、MPEG Audio Layer IIIを用いる非可逆圧縮音声方式、およびその音声ビットストリームを格納したファイルの一般的呼称である。ファイル拡張子は通常.mp3である。

MP3は1990年代後半以降、インターネット上の音楽配布、携帯音楽プレーヤー、CDリッピングなどで広く普及した。

名称

MP3の「MP3」はMPEG Audio Layer IIIに由来する。

Layer IIIはMPEG-1 AudioおよびMPEG-2 Audioの規格群で定義される。Library of CongressはMP3 encodingをISO/IEC 11172-3およびISO/IEC 13818-3に属するMPEG Layer IIIとして整理している。[1]

非可逆圧縮

MP3は非可逆圧縮方式である。

心理音響モデルを利用し、人間の聴覚で知覚されにくい成分へ割り当てる情報量を減らす。

このため、decode後のPCMはencode前のPCMと完全には一致しない。

基本的な符号化

MP3では時間信号を周波数領域へ変換し、聴覚モデルに基づいて量子化精度を割り当てる。

処理には、

  • filter bank
  • MDCT
  • psychoacoustic model
  • quantization
  • Huffman coding
  • stereo coding

などが関係する。

具体的なencoder実装は製品ごとに異なり、同じbitrateでも品質差が生じ得る。

フレーム

MP3 bitstreamは連続したaudio frameとして構成される。

各frameにはsync、version、layer、bitrate、sample rate、channel mode等を示すheaderが含まれる。

MP3ファイルはこれらのbitstreamに加え、先頭または末尾へmetadataを持つ場合がある。

ID3

MP3ではID3 metadataが広く用いられる。

保存できる情報には、

  • title
  • artist
  • album
  • track number
  • genre
  • artwork
  • comment

などがある。

Library of CongressはMP3 file formatを、MP3 bitstreamへID3 metadata blockを前置または後置できるde facto file formatとして説明している。[2]

ビットレート

MP3ではビットレートがファイルサイズと品質を左右する。

代表的には128 kbps、192 kbps、256 kbps、320 kbpsなどが使われてきた。

一般に高bitrateほど符号化に利用できる情報量が増えるが、最終品質はencoder、content、stereo mode、sample rateにも依存する。

CBR

CBR(Constant Bit Rate)では、各区間にほぼ一定のbitrateを割り当てる。

ファイルサイズや転送速度を予測しやすい利点がある。

VBR

VBR(Variable Bit Rate)では、音声内容に応じてbitrateを変化させる。

複雑な部分には多く、単純な部分には少ないデータを割り当てることで、同程度の平均bitrateで効率を高めることができる。

Joint stereo

MP3ではstereo信号の冗長性を利用するJoint Stereoが使われる場合がある。

左右を単純に独立encodeする代わりに、Mid/Side的な表現などを利用してbit allocationを効率化する。

Joint Stereoは「モノラル化」を意味するものではない。

音質とartifact

bitrateやencoder設定が不十分な場合、

  • pre-echo
  • transient smearing
  • high-frequency loss
  • metallic / watery artifact
  • stereo image degradation

などが知覚されることがある。

特に鋭いtransientや高域密度の高い素材は圧縮artifactが現れやすい場合がある。

再エンコード

MP3をWAVへdecodeしても、MP3 encoding時に失われた情報は戻らない。

さらにそのWAVを再びMP3へencodeすると、新しいlossy encodingが加わる。

制作工程では、MP3をmasterとして反復編集するより、WAV、AIFF、FLACなど非圧縮または可逆形式の元データを保持する方が適している。

MP3とAAC

AACはMP3より後に設計されたMPEG系audio coding方式である。

両者はともに非可逆知覚符号化だが、transform、tool、profile、bitstream構造が異なる。

ファイル拡張子やcontainerも異なるため、MP3とAACは互換codecではない。

DAWでの利用

DAWではMP3を、

  • reference track
  • preview
  • rough mix
  • demo
  • podcast export
  • delivery copy

として使うことがある。

録音やmix内部のworking formatには、通常WAVやAIFF等のPCMが適する。

関連項目

参考資料