非圧縮音声ファイル
非圧縮音声ファイルは、音声サンプルをデータ圧縮せずに格納する音声ファイルを指す。DAW、録音、編集、放送、映像制作などでは、PCMをWAVやAIFFへ格納したファイルが代表的である。
「非圧縮」は「無劣化」と似た意味で使われることがあるが、可逆圧縮とは異なる。FLACやALACは元データを完全に復元できるが、保存時には圧縮されている。
PCM
Pulse Code Modulationは、一定間隔で標本化した音声振幅を数値として記録する代表的なデジタル音声表現である。
LPCMでは各サンプルが線形量子化される。
代表的な設定には、
- 44.1 kHz / 16-bit
- 48 kHz / 24-bit
- 96 kHz / 24-bit
- 32-bit float
などがある。
ファイルサイズ
非圧縮PCMのデータ量は概ね、
sample rate × bit depth × channels × duration
で決まる。
44.1 kHz / 16-bit / stereoでは約1411.2 kbpsとなり、1分あたり約10.6 MB程度の音声データになる。
実ファイルにはheaderやmetadataも含まれるため若干増える。
WAV
WAVは非圧縮PCMの保存に非常によく使われる。
ただしWAVはwrapper formatであり、WAVという拡張子そのものが「必ず非圧縮PCM」を意味するわけではない。
Library of CongressもWAVEをaudio bitstreamとdata chunkを格納できるwrapperとして説明し、LPCMをその代表的なencodingとして扱っている。[1]
AIFF
AIFFも非圧縮PCMの保存に広く用いられてきた。
Library of CongressはAIFFを複数種類のsound bitstreamを格納できるwrapperとして整理し、LPCMを代表的利用として説明している。[2]
編集用途
非圧縮PCMは、
- 任意位置へのアクセスが容易
- decode処理が単純
- 再エンコード損失がない
- DAWや編集ソフトとの互換性が高い
ため、録音・編集用に適する。
一方、保存容量と転送帯域は大きくなる。
32-bit float
DAW内部や、WAV・CAFなどの一部のファイル形式では32-bit floating-point PCMが使われる。
整数PCMと異なり、0 dBFSを超える内部値を保持できる実装があり、編集時のヘッドルーム確保に有利である。
ただし最終的なD/A出力や整数形式へ変換する際には適切なレベル管理が必要になる。
非圧縮と可逆圧縮の比較
可逆圧縮は復号後のサンプル列が元データと同一になるため、音質上は非圧縮PCMと等価に扱える。
違いは、
- ファイルサイズ
- decode負荷
- ランダムアクセス
- ソフトウェア互換性
- metadata機能
などにある。
アーカイブ
長期保存では非圧縮WAV/BWFを選ぶ組織も多い。
Library of Congressは保存用途でBroadcast WAVEを使用する例を示している。[3]
一方、FLACのような十分に文書化された可逆圧縮形式を保存用に使う運用も存在する。