Switchcraft 280
Switchcraft 280は、米国イリノイ州シカゴに本社を置くSwitchcraft(スイッチクラフト)が製造する、2極の1/4インチ(6.35 mm)フォーンプラグである。現行のメーカー分類ではLittel Plugs系列に属し、TS構成、はんだ端子、金属製シールドハンドル、ケーブルクランプを備える。
280は単なる現行部品の一つというより、Switchcraftの楽器・放送・業務音響分野における象徴的な製品である。Switchcraftの資料では280を1964年以来の製品として扱い、別の同社資料では同社初期に開発された#11ジャックと#280プラグが長期にわたり業界標準として使用されてきたと説明している。
基本仕様
現行のSwitchcraft製品ページでは、280は次のように記載されている。
- 1/4インチ(6.35 mm)2導体モノラル・フォーンプラグ
- ケーブル取付型
- はんだ終端
- ニッケルめっき接点
- 真鍮製金属ハンドル
- シールド構造
- ケーブル開口径 0.296インチ(約7.5 mm)
- ケーブルクランプ付き
- 非防水・非密閉型
メーカー図面では、tipおよびbodyにニッケルめっき真鍮、端子に電気すずめっき真鍮、絶縁部にフェノール系材料、ハンドルにニッケルめっき真鍮を用いる構成が示されている。
構造
280の特徴の一つは、古典的な商用フォーンプラグとして比較的単純で分解可能な構造を採ることである。tip側の導体、sleeve/body、絶縁体、はんだ端子、金属ハンドル、ケーブルクランプから構成される。
SwitchcraftはLittel-Plug系列について、tip rodを一体構造とし、tip terminalへ固定する設計を特徴として挙げている。これはtip rodを複数部品の接合で構成する方式と比べ、機械的な回転や接合部破損の要因を減らすことを意図したものである。
ケーブルクランプは電気的接続とは別にケーブル外被を機械的に保持する。したがってケーブルへ加わる引張りや捻りを、はんだ接合部だけで受けないようにできる。この点は、頻繁に抜き差しされるギターケーブルや業務用ケーブルで重要になる。
280と11ジャック
Switchcraftのカタログでは、280の代表的な相手側として同社の#11系2導体ジャックが繰り返し指定されている。280と11は、同社の1/4インチ商用フォーン接続体系を代表する組合せである。
ただし、これは専用コネクタ同士という意味ではない。280は一般的な6.35 mm TSフォーンプラグの寸法体系に属し、適合する他社製ジャックにも使用できる。一方で、プラグとジャックの接触ばね形状、寸法公差、めっき、摩耗状態などにより、実際の挿抜感や接触圧には差が生じ得る。
280、380、226の使い分け
同じ2導体1/4インチプラグでも、Switchcraftは用途に応じて複数の形状を用意している。
- 280 - 標準的なストレート型。金属ハンドルとケーブルクランプを持つ。
- 380 - 1インチの短い金属ハンドルを持つショート型。ケーブルクランプを持たない。
- 226 - 通常形状のライトアングル型。
- 228 - 平たい金属ハンドルを持つ低背ライトアングル型。
したがって、280は「最も小さい」あるいは「最も低背」という製品ではなく、ケーブル保持と整備性を含む標準的なストレート型として位置付けるのが適切である。
音楽分野での採用
280は特にエレクトリックギター、ベース、エフェクター、アンプ周辺のケーブルで広く知られている。Switchcraftは1990年の広告で280を音楽業界で非常に多く販売されているギタープラグとして訴求しており、現代でも楽器用コネクタとして流通している。
この歴史的評価は、280が特定の「音色」を付加するよう設計されているという意味ではない。コネクタとしての主要な価値は、規格寸法、接触、機械強度、シールド、ケーブル保持、修理可能性といった電気機械的特性にある。
放送およびプロオーディオでも、Switchcraftの1/4インチプラグ/ジャック群は長期間使用されてきた。同社は創業当初から通信向けのジャック、プラグ、スイッチを製造しており、後に録音・放送・ステージ音響へ用途を拡大した。
歴史
Switchcraftは1946年にシカゴで創業した。現在の本社所在地は5555 N. Elston Ave., Chicago, Illinoisで、1958年から同地が主要拠点となっている。
Switchcraftの280Fシリーズ資料は、280の系譜を1964年まで遡らせている。280Fは280のplug finger設計を継承しつつ、ダイキャストハンドルとゴム系flex reliefを追加した後代の再設計品である。このことからも、280の基本接触部設計が長期間維持されてきたことが分かる。
会社としては1977年にRaytheonに買収され、そのCommercial divisionの独立子会社として約20年間運営された。1997年にRaytheonが防衛事業へ集中する方針を採った際に売却され、2011年にはHEICO Corporationに買収されている。
製造拠点
Switchcraftは1946年にシカゴで創業し、現在の本社は5555 N. Elston Ave., Chicago, Illinoisにある。1958年から同地を主要拠点とし、1977年から1997年まではRaytheon傘下、2011年以降はHEICO CorporationのElectronic Technologies Groupに属する。Switchcraftはシカゴ工場で成形、プレス、めっき、機械加工、組立を行うと説明しており、韓国・仁川にも製造拠点を持つ。ただし、同社の公開製品ページは各部品番号について個別の製造工場を明示していないため、特定型番を一律に「シカゴ製」と断定することは避けるべきである。
Switchcraftは「ほぼすべての製品を米国で製造する」と現在の企業サイトで説明している一方、韓国・仁川にも製造拠点を持つ。280そのものの最新ロットについて、公開資料から製造工場を個体単位で特定することはできない。
音楽以外の用途
1/4インチphone plugは、名称が示す通り音楽専用に生まれた接続方式ではなく、電話・通信系のプラグ/ジャック技術を背景に持つ。Switchcraft自体も通信産業向け部品メーカーとして創業し、現在は医療、通信、輸送、計測、軍用・防衛を含む幅広い市場へ部品を供給している。
ただし、Switchcraftが軍用市場へ製品を供給していることと、280という特定型番が特定の兵器・航空機・通信装置に正式採用されていることは区別する必要がある。公開されている一次資料だけから、280の特定軍用プラットフォームへの採用を一般化することはできない。