DDJ-SX3
DDJ-SX3(ディーディージェイ・エスエックススリー)は、Pioneer DJ(パイオニアDJ)が2018年6月上旬に発売した4チャンネルDJコントローラーである。DDJ-SX2の直接後継機として、Serato DJ Pro向けに設計された。
DDJ-SX3は、SX2の基本レイアウトと4チャンネル・スタンドアロンミキサー機能を継承しつつ、Dual USB、3系統マイク入力、マイク用EQ/コンプレッサー/リバーブ、Sound Color FX、Key Shift/Key Sync/Pitch Playなどを追加した。クラブDJに加え、ウェディング、企業イベント、モバイルDJ、MCを含む現場運用を強く意識したモデルである。
DDJ-SX3はSX名称を持つ最終世代となり、2026年現在DDJ-SX4という直接後継モデルは発売されていない。
概要
DDJ-SX3は4デッキ・4チャンネル構成のSerato DJ Pro用パフォーマンスコントローラーである。
左右の大型ジョグ、マルチカラーPerformance Pads、中央4チャンネルミキサーというSX系の基本構造を維持し、外部CDJ・ターンテーブル入力、XLR/RCA MASTER、BOOTH出力を搭載する。
最大の世代差は、DJ交代とMC/スピーチを含むイベント運用への対応である。2台のPC/Macを同時接続できるDual USBと、最大3人が同時利用できるマイク入力を追加し、DJプレイ以外の現場進行も一台で処理しやすくした。
発売と前モデルとの関係
Pioneer DJは2018年5月31日にDDJ-SX3を発表し、6月上旬から販売した。
前モデルDDJ-SX2は2014年9月発売で、Serato Flip、DVS、マルチカラーPerformance Padsなどを特徴としていた。
SX3ではこれらのパフォーマンス機能を継承しながら、Pioneer DJがSX2の利用者として認識していたモバイルDJ、ウェディングDJ、企業イベントDJのニーズをより明確に取り込んだ。
このためSX3は、純粋なコントローラーパフォーマンス能力だけでなく、交代、バックアップPC、複数マイク、アナウンスなどイベント運用全体を重視した設計となった。
Dual USB
リアパネルにUSB Type-B端子を2系統備える。
2台のPC/Macを同時に接続し、Serato DJ Proを使用するDJ同士でシームレスに交代できる。
また、2台目をバックアップPCとして待機させることもできる。
従来のSX/SX2はUSB Type-B端子1系統であり、DJ交代時には接続の切り替えが必要だった。SX3のDual USBは、イベント現場で音を止めずにDJを交代するための重要な改良である。
3系統マイク入力
DDJ-SX3は最大3系統のマイク入力を備える。
リアパネルの2系統に加え、フロントパネルへ専用マイク入力1系統を追加した。
フロントの専用マイク入力は4つのミキサーチャンネルを占有せずに使用できるため、4デッキ/4チャンネルのDJプレイを維持したままMCや司会音声を加えられる。
3系統を同時使用すれば、DJ、司会、ゲストスピーカー、ボーカリストなど複数人が同時にマイクを使用できる。
マイク処理
SX3ではマイク系の信号処理が大幅に強化された。
各マイクに対して以下の処理を利用できる。
- 3バンドEQ
- Low Cut Filter
- Compressor
- Reverb
さらにリア側2系統のマイク入力にはSound Color FXやSerato DJ Pro FXも適用できる。
この構成は、DJミックスとMC/スピーチの双方を一台で扱うイベント運用に適している。
Sound Color FX
4種類のSound Color FXを搭載する。
- Filter
- Echo
- Jet
- Noise
各チャンネルのColorノブを用いて直感的に処理できる。
Sound Color FXはDJM系列で広く使われる操作概念であり、SX3ではSeratoコントローラー環境へ統合されている。
Performance Pads
各デッキに8個のマルチカラーPerformance Padsを備える。
Hot Cue、Sampler、Roll、Slicerなどに加え、Pitch Play等を含む複数のSerato DJ Pro機能を操作できる。
パッド色と点灯状態は選択モードや演奏状態と連動し、PC画面を見続けずに操作状態を把握しやすい。
Key Shift / Key Sync / Pitch Play
SX3にはSerato Pitch 'n Time DJのライセンスが付属し、キー関連の高度な機能へ対応する。
Key Shiftは楽曲キーを半音単位で変更する。
Key Syncはミックス対象曲のキーを自動的に合わせる。
Pitch PlayはHot Cueを異なる音程へ割り当て、Performance Padsを鍵盤的に使用する機能である。
これにより、単なるテンポ同期だけでなく、ハーモニックミキシングやリアルタイムリミックスへ対応する。
ジョグホイール
大型ジョグとOn Jog Displayを搭載する。
SX3ではSX2より低レイテンシー化され、スクラッチ時の応答が改善された。
On Jog Displayでは再生位置等を確認でき、パフォーマンス中の視線移動を減らす。
4チャンネルスタンドアロンミキサー
SX3は4系統の外部入力を備え、PCを介さずに外部CDJやターンテーブルをミックスできる。
| 入力 | 構成 |
|---|---|
| LINE / PHONO | RCA ×2系統 |
| LINE | RCA ×2系統 |
DVS Expansion Packを利用すれば、外部CDJやターンテーブルからSerato DJ Proデッキをコントロールする構成も可能。
オーディオと接続
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ミキサーチャンネル | 4 |
| ソフトウェアデッキ | 4 |
| 周波数特性 | 20 Hz - 20 kHz |
| S/N比 | 107 dB(USB)、96 dB(LINE)、87 dB(PHONO)、80 dB(MIC) |
| 全高調波歪率 | 0.003 %(USB)、0.005 %(LINE) |
| LINE/PHONO入力 | RCA ×2 |
| LINE入力 | RCA ×2 |
| MIC入力 | 3系統 |
| MASTER OUT | XLR ×1、RCA ×1 |
| BOOTH OUT | 1/4インチTRS ×1系統 |
| PHONES | 1/4インチ ×1、3.5 mm ×1 |
| USB | USB Type-B ×2 |
| 電源 | ACアダプター、DC 5 V |
| 外形寸法 | 664 × 354.4 × 70.4 mm |
| 質量 | 6.1 kg |
Serato DJ Pro
DDJ-SX3はSerato DJ Pro専用コントローラーとして発売された。
接続によってSerato DJ ProをHardware Unlock的に利用でき、発売時にはSerato FlipとPitch 'n Time DJのExpansion Pack Voucherが付属した。
SX2世代ではSerato FlipとDVSが大きな追加要素だったのに対し、SX3ではSeratoのキー操作機能とイベント運用機能が重視された。
DDJ-SX2との主な違い
| 項目 | DDJ-SX2 | DDJ-SX3 |
|---|---|---|
| 発売 | 2014年9月下旬 | 2018年6月上旬 |
| USB | Type-B ×1 | Type-B ×2 |
| MIC | 2系統 | 3系統 |
| マイク処理 | 基本レベル/EQ系 | EQ、Low Cut、Compressor、Reverb |
| Sound Color FX | 基本Filter中心 | Filter / Echo / Jet / Noise |
| キー操作 | 後年対応あり | Key Shift / Key Sync / Pitch Playを前面統合 |
| ジョグ | SX2改良版 | さらに低レイテンシー |
| 主な訴求 | Serato Flip / DVS / pad performance | イベント運用 / DJ交代 / MC / harmonic performance |
2018年の無償点検・修理
2018年8月、Pioneer DJは一部DDJ-SX3について無償点検・修理を案内した。
対象となる一部製品では、本体内部部品の不具合により、使用中に音声が出力されなくなる、または表示LEDがすべて消灯する症状が発生する可能性が確認された。
公式案内では、本体底面または梱包箱のシリアルラベルを確認し、バーコード横に黒い識別マークがない個体が対象とされた。識別マークのある個体は対象外とされた。
中古機を購入する場合、このサービス情報を確認する価値がある。
SX系列の最終世代
DDJ-SX3以降、DDJ-SX4という型番の直接後継機は発売されていない。
Pioneer DJの4チャンネルSerato対応コントローラーは、その後DDJ-1000SRT、DDJ-FLX10など別系列へ展開された。
したがってSX3は、2012年のDDJ-SXから続いた「SX」という名称の三世代系列の最終モデルとして位置づけられる。
中古機として使用する場合
DDJ-SX3は2026年時点でアーカイブ製品。
確認項目は以下。
- 2018年無償点検対象個体か
- Serato DJ Proとの現行互換性
- OS・ドライバー
- ファームウェア
- USB A/B切替
- 3系統MIC入力
- ジョグ、Performance Pads、フェーダー
- LINE/PHONO入力
- XLR/RCA MASTER
- BOOTH OUT
- ACアダプター
特にSX3はモバイルDJ用途で長時間使用された中古個体も多いため、端子、フェーダー、マイク入力、USB端子の物理状態を確認するとよい。
関連項目
- Pioneer DJ
- DDJ
- DDJ-SX
- DDJ-SX2
- DDJ-1000SRT
- DDJ-FLX10
- Serato DJ Pro
- Serato Flip
- Pitch 'n Time DJ
- DVS
- Sound Color FX
- Performance Pads
- モバイルDJ