Pulse width
Pulse width(パルスワイズ、パルス幅)は、パルス波や矩形波の1周期のうち、特定の状態が持続する時間幅を表す量である。シンセサイザーでは、オシレーターのパルス波の形状と倍音構成を決める主要パラメーターとして用いられる。
実務上のシンセサイザーでは、Pulse widthを絶対時間ではなく周期に対する割合として表し、0〜100%や0.0〜1.0で設定することが多い。この場合はデューティ比とほぼ同じ量を指す。
定義
周期Tのパルス波でHigh状態が続く時間をτとすると、Pulse widthの絶対値はτである。
周期に対する比として表す場合、
Pulse width ratio = τ / T
となる。
百分率なら、
Duty cycle [%] = (τ / T) × 100
である。
たとえば周期10 msの波形でHighが5 msならPulse width ratioは0.5、Duty cycleは50%となる。
Pulse width と Duty cycle
電子工学ではPulse widthは秒、ミリ秒、マイクロ秒など時間で表す場合があり、Duty cycleは周期に対する比率を表す。
一方、シンセサイザーではノブやパラメーター名として「Pulse Width」が使われながら、実際には0〜100%の比率を操作する製品が多い。
このため、シンセシス文脈ではPulse widthとDuty cycleがほぼ同義的に使われる場合がある。
両者を区別する必要がある場面では、
- Pulse width: パルスの絶対的な時間幅
- Duty cycle: 周期全体に占める割合
として扱うと明確である。
50% と Square wave
HighとLowが同じ長さになる50% dutyの対称矩形波はSquare waveである。
Pulse widthを50%からずらすと、HighとLowの滞在時間が非対称なパルス波になる。
たとえば、
- 50%: Square wave
- 25%: 周期の4分の1がHigh
- 10%: 非常に細いHigh pulse
- 75%: Highが長くLowが短い
となる。
25%と75%は波形の極性関係やDC成分を除けば、交流成分の振幅スペクトルに対称的な関係を持つ。
倍音構成
Pulse widthを変えると各倍音の振幅が変化する。
50% Square waveでは偶数次倍音が打ち消され、奇数次倍音だけが残る。
50%から外れると偶数次倍音も現れ、特定のDuty cycleでは特定次数の倍音が周期的に弱くなる、または理想的には消える。
一般的な矩形パルス列のn次倍音振幅は、Duty cycle Dに対して概念的に、
Aₙ ∝ sin(nπD) / n
のような関係を持つ。
このためPulse widthは、フィルターを使わずにオシレーター自身のスペクトルを変化させる波形パラメーターとして重要である。
Pulse widthと音色
Pulse widthが50%のときは典型的なSquare waveの音色になる。
50%から離れるにつれて偶数次倍音を含むスペクトルとなり、より細いPulseでは独特の細く鋭い音色が得られる。
Ableton Liveの旧Analogドキュメントでは、Rectangular oscillatorのPulse Widthを狭くするとthinまたはpinchedな音色となり、対称状態ではSquare waveとなることが説明されている。[1]
シンセサイザーでの表記
製品によって、
- PW
- Pulse Width
- Width
- Shape
- Duty
- Duty Cycle
などの名称が使われる。
同じ名称でも、パラメーター範囲の定義は製品ごとに異なる。
たとえば50%を中央値として0〜100%表示する機種もあれば、中央を0として正負方向に波形対称性を変化させる機種もある。
したがって、数値だけで実際のDuty cycleを断定する場合は機器マニュアルを確認する。
PWMとの関係
Pulse widthを時間的に変化させるのがPulse Width Modulationである。
たとえばLFOをPulse Widthへ入力すると、
40% → 50% → 60% → 50% → ...
のようにDuty cycleが周期的に変化する。
これに伴って倍音構成も連続的に変化し、静止したPulse waveより動きのある音色になる。
変調源
Pulse Widthの代表的な変調源には、
などがある。
LFOを使えば周期的PWM、Envelopeを使えばノート開始後に一方向へ変化するPulse Width sweepを作れる。
アナログ回路
アナログVCOでは、ノコギリ波や三角波をコンパレーターへ入力し、比較閾値を変えることでPulse Widthを生成する方式がある。
たとえばランプ波が閾値より高い区間をHigh、低い区間をLowにすれば、閾値位置がそのままDuty cycleを決める。
比較閾値をCVで動かせばPWMとなる。
この方式はPulse Widthが独立した波形形状パラメーターとして実装しやすい。
デジタルシンセサイザー
デジタルではPulse Widthを、
- wavetable読み出し位置
- phase distortion
- comparator演算
- band-limited pulse generator
- oscillator warp
などで実現できる。
Ableton WavetableのClassic oscillator effectでは、PWパラメーターによって波形のPulse widthを変更でき、ハードウェアシンセでは通常Square/Pulse系で行われる処理を他のwavetableにも適用している。[2]
極端なPulse width
Pulse widthを0%または100%へ近づけると、一方の状態がほぼ消失する。
理想的な0%または100%では交流成分が消え、一定値のDCに近づく。
実際のシンセサイザーでは、
- 最小/最大値を制限する
- 無音にならない範囲へクランプする
- DCを除去する
- 波形を折り返す
などの実装が行われる場合がある。
DC成分
High/Lowが+1/-1で対称な波形では、Duty cycleが50%なら平均値は0である。
Pulse widthを50%からずらすと平均値が変化し、DC成分が発生する。
実際のオーディオオシレーターでは出力カップリングやDSP処理によってDC成分を除去する場合があるため、画面上のPulse shapeと実際の出力平均値が単純には一致しないこともある。
制御信号としてのPulse width
Pulse widthは音声波形以外でも、
- Clock
- Gate
- Trigger
- PWM control
- Servo control
- Switching power conversion
など広い電子回路分野で使われる。
これらでは絶対時間としてのPulse widthが重要になる場合も多く、シンセサイザーの音色パラメーターとしてのPulse Widthとは文脈が異なる。