MP3
MP3は、MPEG Audio Layer IIIを用いる非可逆圧縮音声方式、およびその音声ビットストリームを格納したファイルの一般的呼称である。ファイル拡張子は通常.mp3である。
MP3は1990年代後半以降、インターネット上の音楽配布、携帯音楽プレーヤー、CDリッピングなどで広く普及した。
名称
MP3の「MP3」はMPEG Audio Layer IIIに由来する。
Layer IIIはMPEG-1 AudioおよびMPEG-2 Audioの規格群で定義される。Library of CongressはMP3 encodingをISO/IEC 11172-3およびISO/IEC 13818-3に属するMPEG Layer IIIとして整理している。[1]
非可逆圧縮
MP3は非可逆圧縮方式である。
心理音響モデルを利用し、人間の聴覚で知覚されにくい成分へ割り当てる情報量を減らす。
このため、decode後のPCMはencode前のPCMと完全には一致しない。
基本的な符号化
MP3では時間信号を周波数領域へ変換し、聴覚モデルに基づいて量子化精度を割り当てる。
処理には、
- filter bank
- MDCT
- psychoacoustic model
- quantization
- Huffman coding
- stereo coding
などが関係する。
具体的なencoder実装は製品ごとに異なり、同じbitrateでも品質差が生じ得る。
フレーム
MP3 bitstreamは連続したaudio frameとして構成される。
各frameにはsync、version、layer、bitrate、sample rate、channel mode等を示すheaderが含まれる。
MP3ファイルはこれらのbitstreamに加え、先頭または末尾へmetadataを持つ場合がある。
ID3
MP3ではID3 metadataが広く用いられる。
保存できる情報には、
- title
- artist
- album
- track number
- genre
- artwork
- comment
などがある。
Library of CongressはMP3 file formatを、MP3 bitstreamへID3 metadata blockを前置または後置できるde facto file formatとして説明している。[2]
ビットレート
MP3ではビットレートがファイルサイズと品質を左右する。
代表的には128 kbps、192 kbps、256 kbps、320 kbpsなどが使われてきた。
一般に高bitrateほど符号化に利用できる情報量が増えるが、最終品質はencoder、content、stereo mode、sample rateにも依存する。
CBR
CBR(Constant Bit Rate)では、各区間にほぼ一定のbitrateを割り当てる。
ファイルサイズや転送速度を予測しやすい利点がある。
VBR
VBR(Variable Bit Rate)では、音声内容に応じてbitrateを変化させる。
複雑な部分には多く、単純な部分には少ないデータを割り当てることで、同程度の平均bitrateで効率を高めることができる。
Joint stereo
MP3ではstereo信号の冗長性を利用するJoint Stereoが使われる場合がある。
左右を単純に独立encodeする代わりに、Mid/Side的な表現などを利用してbit allocationを効率化する。
Joint Stereoは「モノラル化」を意味するものではない。
音質とartifact
bitrateやencoder設定が不十分な場合、
- pre-echo
- transient smearing
- high-frequency loss
- metallic / watery artifact
- stereo image degradation
などが知覚されることがある。
特に鋭いtransientや高域密度の高い素材は圧縮artifactが現れやすい場合がある。
再エンコード
MP3をWAVへdecodeしても、MP3 encoding時に失われた情報は戻らない。
さらにそのWAVを再びMP3へencodeすると、新しいlossy encodingが加わる。
制作工程では、MP3をmasterとして反復編集するより、WAV、AIFF、FLACなど非圧縮または可逆形式の元データを保持する方が適している。
MP3とAAC
AACはMP3より後に設計されたMPEG系audio coding方式である。
両者はともに非可逆知覚符号化だが、transform、tool、profile、bitstream構造が異なる。
ファイル拡張子やcontainerも異なるため、MP3とAACは互換codecではない。
DAWでの利用
DAWではMP3を、
- reference track
- preview
- rough mix
- demo
- podcast export
- delivery copy
として使うことがある。
録音やmix内部のworking formatには、通常WAVやAIFF等のPCMが適する。