DDJ-400
DDJ-400(ディーディージェイ・400)は、Pioneer DJ(パイオニアDJ)が2018年に発売した2チャンネルDJコントローラーである。rekordbox(レコードボックス)および当時のDJパフォーマンス機能rekordbox dj向けのエントリーモデルとして開発され、CDJ-2000NXS2とDJM-900NXS2に近い操作配置を採用したことを大きな特徴とする。
DDJ-400は、Pioneer DJが「クラブスタンダードレイアウト」と呼んだ操作体系を入門価格帯へ展開し、rekordboxのチュートリアル機能と組み合わせることで、家庭でDJを学び、その操作経験をCDJ+DJM環境へつなげることを強く意識したモデルである。
2022年に生産終了し、後継機はDDJ-FLX4。
概要
DDJ-400は、PC/Mac上のrekordboxをUSB経由で操作する2デッキ・2チャンネル構成のDJコントローラーである。
左右のデッキ部にはジョグホイール、PLAY/PAUSE、CUE、テンポフェーダー、ループ操作、Performance Pads等を配置し、中央のミキサー部にはTRIM、3バンドEQ、FILTER、チャンネルフェーダー、Cue、クロスフェーダーを備える。
上位CDJ/DJM系に近い操作配置を採用するため、DDJ-RBなど従来のrekordbox向け入門DDJよりも、クラブ常設機器との操作上の連続性を前面に出している。
USBオーディオインターフェースを内蔵し、USBバスパワーで動作する。
発売と位置づけ
Pioneer DJは2018年6月26日にrekordbox Ver.5.3を公開し、同時にDDJ-400を発表した。
発売時の主対象はDJ初心者であり、rekordboxの新しいTutorial機能と組み合わせて、機材の接続、基本操作、DJミックスの考え方をソフトウェア上で段階的に学べる構成が用意された。
DDJ-400の製品設計は、単に機能数を増やす方向より、プロフェッショナルDJ機器と同じ場所に同じ種類の操作子を置くことを重視している。
これはPioneer DJの入門機における重要な転換であり、後継のDDJ-FLX4にも基本思想が継承された。
クラブスタンダードレイアウト
プレーヤー部
DDJ-400の左右デッキは、CDJ-2000NXS2を意識した配置を持つ。
主な要素は以下。
- ジョグホイール
- PLAY/PAUSE
- CUE
- テンポフェーダー
- BEAT SYNC
- MASTER
- CDJ型のLOOP IN / OUT / RELOOP
- CUE/LOOP CALL
- Performance Pads
特にループ操作をCDJに近い専用ボタン配置へした点が、従来の入門DDJとの差として重要である。
ミキサー部
中央ミキサー部はDJM-900NXS2に近い論理配置を採用する。
各チャンネルにはTRIM、HI/MID/LOW EQ、FILTER、Cue、チャンネルフェーダーを配置し、下部にクロスフェーダーを備える。
右側にはBeat FXの操作部があり、エフェクト選択、チャンネル選択、拍数、LEVEL/DEPTHなど、DJM系列で一般的なBeat FXの考え方を小型コントローラー上で学べる。
Beat FX
DDJ-400では、rekordbox側のBeat FXを本体から操作できる。
Beat FXはトラックのテンポ情報を基準として、ディレイ、エコー、フランジャーなどの時間系/変調系処理を拍単位で同期させる考え方である。
DDJ-400ではBeat FX操作部をミキサー右側へまとめ、DJM系ミキサーに近い視覚構成を採用した。
この設計により、ソフトウェア上のエフェクトを操作するだけでなく、DJM系列で使われる「エフェクト種類を選ぶ → 対象チャンネルを選ぶ → 拍数を決める → LEVEL/DEPTHでかける」という操作概念を学習できる。
Sound Color FX / Filter
各チャンネルにはFILTERノブがあり、rekordboxのSound Color FX系操作に利用される。
通常のフィルター用途では、中央位置から一方へ回すとローパス、反対方向へ回すとハイパスの処理となる。
Pioneer DJのDJM系列では各チャンネルにColor FX用ノブを持つ構成が広く採用されており、DDJ-400はその操作感を簡略化して取り込んでいる。
Performance Pads
各デッキに8個のPerformance Padsを備える。
rekordbox上のHot Cue、Pad FX、Beat Jump、サンプラーなど複数のPad Modeへアクセスできる。
DDJ-SB/SB2世代ではPLAY/CUE等がパッド群に含まれる設計が見られたが、DDJ-400ではPLAY/CUEを専用大型ボタンとして独立させ、Performance Padsを演奏・編集機能へ集中させている。
rekordboxとの統合
rekordbox dj
発売時のDDJ-400にはrekordbox djのライセンスキーが付属した。
当時のrekordboxは楽曲管理とエクスポートに加え、Performance modeを有償Plus Packとして提供していた。DDJ-400はこのPerformance modeを直接操作するための専用ハードウェアとして設計された。
rekordboxのライセンス体系はその後変更され、現行バージョンではHardware Unlock等の考え方へ移行しているため、発売当時のライセンスキー方式と現在の利用条件は区別して扱う必要がある。
Tutorial機能
rekordbox Ver.5.3ではTutorial機能が導入され、DDJ-400はその中心的な対応ハードウェアとして発売された。
Tutorialでは、接続方法、基本的な機器操作、DJプレイの基礎などをPC画面上で確認しながら学習できる。
DDJ-400自体が上位CDJ/DJMに近い配置を持つため、チュートリアルで覚えた操作を、後にクラブ用機材へ移行しやすいという製品設計になっている。
djayへの対応
2019年9月、DDJ-400はAlgoriddimのdjayおよびdjay Proへ正式対応した。
当時はdjay側のSpotify連携も訴求され、iPhone/iPadでも変換アダプターを介してDDJ-400を利用できた。
ストリーミングサービスの対応状況は後年変更されているため、現在利用できるサービスはdjay側の最新仕様を確認する必要がある。
オーディオと接続
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| チャンネル数 | 2 |
| デッキ制御 | 2デッキ |
| 周波数特性 | 20 Hz - 20 kHz |
| S/N比 | 103 dB (USB) |
| 全高調波歪率 | 0.005 % |
| MIC入力 | 1/4インチTS ×1 |
| MASTER出力 | RCAステレオ ×1 |
| ヘッドホン出力 | 3.5 mmステレオミニ ×1 |
| USB | USB Type-B ×1 |
| 電源 | USBバスパワー |
| 外形寸法 | 482 × 272.4 × 58.5 mm(公称高さ表記は資料により59.2 mm) |
| 質量 | 2.1 kg |
本体はUSBオーディオインターフェースを内蔵する。
外部ターンテーブルやCDJをミックスするためのLINE/PHONO入力は持たず、rekordbox等のDJソフトウェアを主音源とする。マスター出力もRCAアンバランス1系統であり、ブース出力やXLRバランス出力を持つ上位コントローラーとは用途が異なる。
USBバスパワーとクラスコンプライアント
DDJ-400はUSBバスパワーで動作し、PC/MacとのUSB接続から電源供給を受ける。
発売時資料ではクラスコンプライアント動作も特徴として挙げられ、専用ドライバーのインストールを必要とせず利用できる構成が訴求された。
これにより、持ち運びやセットアップが簡潔になり、自宅練習、教育、小規模パーティーなどへ適した。
カラーバリエーション
標準モデルはブラック。
2019年には数量限定のシルバーモデルDDJ-400-Sが発売された。基本仕様とレイアウトはブラックモデルと共通である。
DDJ-RBとの関係
DDJ-400はrekordbox向け入門コントローラーDDJ-RBの後継的な位置にある。
DDJ-RBはPerformance Padsを中心とする従来DDJ型のインターフェースを採用していた。DDJ-400では、CDJ-2000NXS2とDJM-900NXS2へ寄せた配置へ再構成し、入門機からクラブ機材への操作連続性をより強く打ち出した。
DDJ-FLX4との関係
2022年、DDJ-400は生産終了となり、後継モデルDDJ-FLX4へ移行した。
DDJ-FLX4はDDJ-400のクラブ志向レイアウトを継承しつつ、USB Type-C、スマートフォン/タブレット対応、rekordboxとSerato DJ Liteの両対応、Smart Fader、Smart CFXなどを追加した。
Pioneer DJ自身もDDJ-FLX4の発表時にDDJ-400を「エントリー層向けのスタンダードモデル」と位置づけており、DDJ-400が同社の入門コントローラーの基準を形成したことを示している。
歴史的位置づけ
DDJ-400の重要性は、Pioneer DJの入門コントローラーを、単に安価なソフトウェア操作機からクラブ機材の操作学習端末へ再設計した点にある。
CDJ型のトランスポート/ループ、DJM型のミキサー/Beat FX、rekordboxチュートリアルを組み合わせることで、自宅で覚えた操作を上位機へ移行しやすくした。
この考え方は後継DDJ-FLX4にも受け継がれ、2020年代のPioneer DJ/AlphaTheta入門機における基本設計となった。
中古機として使用する場合
DDJ-400は2026年時点で公式製品ページ上「Archived」と表示される生産終了製品である。
一方、Pioneer DJのFirmware Update Manager対象一覧には近年までDDJ-400が含まれており、比較的新しいPioneer DJ世代の旧製品としてサポート資産が残されている。
中古機を使用する場合は以下を確認するとよい。
- 現行rekordboxとのHardware Unlock/対応状況
- 使用OSとの互換性
- USB Type-Bケーブル
- ファームウェア
- ジョグ、テンポフェーダー、チャンネルフェーダー、クロスフェーダーの状態
- Performance Padsの反応
- RCAマスター出力
- 3.5 mmヘッドホン出力
- MIC入力
発売当時付属したrekordbox djライセンスキーカードは、現在のrekordboxライセンス体系とは扱いが異なるため、中古購入時の価値を現行ソフトウェア利用権と同一視しない方がよい。
関連項目
- Pioneer DJ
- AlphaTheta
- DDJ
- DDJ-RB
- DDJ-FLX4
- rekordbox
- CDJ-2000NXS2
- DJM-900NXS2
- Beat FX
- Sound Color FX
- ジョグホイール
- DJコントローラー