ブリッジモノモード
ブリッジモノモード(英: Bridge-Mono Mode)とは、パッシブスピーカーの接続・駆動形式の1つであり、2チャンネルのパワーアンプに内蔵されている2つのアンプチャンネルを組み合わせ、1つのパッシブスピーカー負荷を駆動する動作モードである。
通常のStereoモードでは、Channel 1とChannel 2がそれぞれ独立したスピーカーを駆動する。
なお、ブリッジモノモードでパワーアンプから直接駆動されるスピーカーは、原則としてパッシブスピーカーである。
Stereo Mode Channel 1 → Speaker L Channel 2 → Speaker R
これに対してBridge-Monoモードでは、2つのアンプチャンネルを1組として使用し、1つのスピーカーを駆動する。
Bridge-Mono Mode
Channel 1 ──┐
├── Speaker
Channel 2 ──┘
主な目的は、2チャンネルのアンプを使用して1系統へ、より大きな出力電圧を供給することである。
PAシステムでは、大きな出力を必要とするサブウーファーなどの駆動に使用されることがある。
動作原理
Bridge-Monoモードでは、2つのアンプチャンネルを互いに逆方向へ動作させる。
例えば、ある瞬間にChannel 1の出力が+20 V、Channel 2の出力が-20 Vである場合を考える。
Channel 1 = +20 V Speaker Channel 2 = -20 V
スピーカーは2つの出力の間に接続されるため、スピーカー両端の電圧差は、
+20 V - (-20 V) = 40 V
となる。
つまり、一方のアンプ出力だけを基準にする場合よりも、大きな電圧振幅をスピーカーへ与えることができる。
この「2つのアンプ出力の間に負荷を接続する」という構成が、Bridgeという名称の由来である。
なぜ出力が大きくなるのか
スピーカーへ供給される電力は、スピーカーに加わる電圧と負荷インピーダンスの関係によって決まる。
Bridge-Monoでは、2つのアンプチャンネルを逆相で動作させるため、理想的にはスピーカー両端に得られる電圧振幅を、単一チャンネルの場合のおよそ2倍にできる。
同じ負荷インピーダンスに対して電圧が2倍になれば、理論上の電力は4倍になる。
ただし、実際のパワーアンプでは、
- 電源回路の容量
- 出力段の電流容量
- 発熱
- 保護回路
- 最低負荷インピーダンス
などの制約が存在するため、実際のBridge-Mono出力がStereo時の1チャンネル出力の4倍になるとは限らない。
メーカーが公表しているBridge-Mono時の定格出力を確認する必要がある。
負荷インピーダンス
Bridge-Monoで特に重要なのが、スピーカーの負荷インピーダンスである。
Bridge-Monoでは、1つのスピーカー負荷を2つのアンプチャンネルで駆動する。
理想化して考えると、8 ΩのスピーカーをBridge-Monoで駆動した場合、それぞれのアンプチャンネルからは約4 Ω相当の負荷を駆動している状態になる。
Bridge load = 8 Ω ↓ 各アンプチャンネルから見た負荷 約4 Ω相当
したがって、
Stereo Mode: 4 Ωまで対応
というアンプであっても、
Bridge-Mono Mode: 4 Ωまで対応
とは限らない。
例えば、Stereoでは4 Ω負荷を使用できても、Bridge-Monoでは8 Ω以上の負荷のみをメーカーが許可している場合がある。
Bridge-Mono時の最低負荷インピーダンスは、必ずパワーアンプの仕様書またはマニュアルで確認する必要がある。
Stereoモードとの違い
Stereoモードでは、2つのアンプチャンネルは独立している。
Input 1 → Amplifier CH1 → Speaker 1 Input 2 → Amplifier CH2 → Speaker 2
例えば、2チャンネルのパワーアンプを左右のPAスピーカーへ接続する場合にはStereoモードを使用できる。
一方、Bridge-Monoでは2つのチャンネルを組み合わせる。
Input → Amplifier CH1 + CH2 → Speaker
そのため、2チャンネルアンプであっても、Bridge-Mono動作中には基本的に1系統のスピーカー出力として使用することになる。
Parallelモードとの違い
Bridge-MonoとParallelは混同されることがあるが、動作は異なる。
Parallelモードでは、1つの入力信号を2つのアンプチャンネルへ送り、それぞれのチャンネルが独立してスピーカーを駆動する。
┌→ Channel 1 → Speaker 1
Input ───────┤
└→ Channel 2 → Speaker 2
これに対してBridge-Monoでは、
┌→ Channel 1 ─┐
Input ───────┤ ├→ Speaker
└→ Channel 2 ─┘
のように、2つのアンプチャンネルそのものを組み合わせて1つの負荷を駆動する。
したがって、
Parallel Mono = 同じ信号を2チャンネルで別々に増幅する
のに対し、
Bridge Mono = 2チャンネルの出力を組み合わせて1つの負荷を駆動する
という違いがある。
Crown XLiシリーズなどのパワーアンプでは、Stereo、Parallel、Bridge-Monoがそれぞれ独立した動作モードとして用意されている。[1]
Bridge-Mono時のスピーカー接続
Bridge-Monoでは、通常のStereo接続とは異なる出力端子を使用する場合がある。
例えば一般的なStereo接続では、
Channel 1 + → Speaker + - → Speaker -
のように、1チャンネルの+端子と-端子の間へスピーカーを接続する。
一方Bridge-Monoでは、2つのチャンネルの出力端子間にスピーカーを接続する。
機種によっては、
Channel 1 +
↓
Speaker
↑
Channel 2 +
という接続になる。
このため、Bridge-Monoモードでは通常のスピーカー出力の「-端子」が使用されないこともある。
具体的な端子およびspeakONのピンアサインはアンプごとに異なるため、メーカー指定の配線を使用する必要がある。
スピーカーの-側もGNDとは限らない
Bridge-Monoで重要なのは、スピーカーの両端がアンプによって能動的に駆動されている場合があることである。
通常の感覚で、
Speaker - = Ground
と考えてはいけない。
Bridge-Monoでは、
Amplifier output A
↓
Speaker
↑
Amplifier output B
となっており、スピーカーの両端がアンプ出力である。
したがって、Bridge-Mono出力の一方を筐体GNDや他のアンプのスピーカー端子へ不用意に接続すると、アンプを損傷する可能性がある。
Bridge-Mono時にはメーカー指定以外の配線を行うべきではない。
speakONとBridge-Mono
業務用PAアンプでは、Bridge-Mono出力にspeakONコネクタが使用されることがある。
通常の2芯speakONスピーカーケーブルでは、
1+ → 1+ 1- → 1-
というストレート配線が一般的である。
しかしBridge-Monoでは、アンプ側で、
1+ 2+
などの接点を使用する機種がある。
そのため、Bridge-Mono接続では専用のピンアサインを持つモノブリッジケーブルが使用される場合がある。
例えば、
AMPLIFIER END SPEAKER END 1+ ----------------> 1+ 2+ ----------------> 1-
のように、アンプ側とスピーカー側で異なるピンを接続するケーブルが存在する。
詳細はモノブリッジケーブルを参照。
Crown XLiシリーズの例
Crown XLiシリーズは、
- Stereo
- Parallel
- Bridge-Mono
の3種類の出力モードを備えている。
メーカーのオペレーションマニュアルでは、Bridge-Monoモードを使用する場合、背面のOutput Mode SwitchをBRIDGEへ設定し、指定された方法でスピーカーを接続するよう定められている。
また、Bridge-Mono時にはChannel 1のGain Controlのみが使用される。[1]
Crown XLiシリーズはspeakONおよびバインディングポストによるBridge-Mono接続に対応している。
このように、Bridge-Monoは単に「2本のスピーカーケーブルをまとめる」ような機能ではなく、パワーアンプ内部の2つの増幅チャンネルを異なる動作状態にして使用するアンプの動作モードである。
Bridge-Monoを使用する主な目的
Bridge-Monoは、主に1つのスピーカー系統へ大きなアンプ出力を供給したい場合に使用される。
PAシステムでは例えば、
- 大型サブウーファーの駆動
- 高出力を必要とするパッシブスピーカーの駆動
- Stereo運用を必要としないモノラルPAシステム
などで使用される場合がある。
ただし、Bridge-Monoを使用すれば常に有利になるわけではない。
Bridge-Monoではアンプ各チャンネルの負荷条件が厳しくなるため、スピーカーのインピーダンスやアンプの定格によってはStereoモードの方が適切な場合もある。
Bridge-Monoを使用するときの確認事項
Bridge-Monoモードを使用するときには、少なくとも次の項目を確認する必要がある。
- パワーアンプがBridge-Monoに対応しているか
- Bridge-Mono時の最低負荷インピーダンス
- Bridge-Mono時の定格出力
- スピーカーの公称インピーダンス
- スピーカーの許容入力
- Bridge-Mono時に使用する出力端子
- speakONを使用する場合のピンアサイン
- 入力信号を接続するチャンネル
- Gain Controlの動作
- メーカーが指定する動作モード設定
特に、StereoモードとBridge-Monoモードではスピーカー出力端子の使用方法が異なる場合があるため、配線変更の前にアンプの電源を切り、メーカーのマニュアルを確認する必要がある。
まとめ
Bridge-Monoモードとは、
2チャンネルのパワーアンプの2つの増幅チャンネルを組み合わせ、1つのスピーカー負荷をより大きな電圧で駆動する動作モード
である。
通常のStereoモードでは、
1 Channel → 1 Speaker
であるのに対して、Bridge-Monoでは、
2 Channels → 1 Speaker
となる。
2つのアンプ出力を互いに逆方向へ動作させ、その出力間にスピーカーを接続することで、単一チャンネルより大きな出力電圧を得ることができる。
一方で、各アンプチャンネルから見た負荷インピーダンスは低くなるため、Bridge-Mono時にはStereo時とは異なる最低負荷条件が設定されることが多い。
また、スピーカー出力のピンアサインも通常接続とは異なる場合がある。
そのためBridge-Monoを使用するときには、
アンプのBridge-Mono仕様、負荷インピーダンス、スピーカーの許容入力、出力端子のピンアサイン
をセットで確認する必要がある。